概略
生年月日 | 1977年8月3日(42歳) |
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出身地 | ![]() カリフォルニア州サンマテオ |
身長 | 6′ 4″ =約193cm |
体重 | 225 lb =約102.1kg |
大学 | ミシガン大学 |
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NFLドラフト | 2000年 / 6巡目全体199位 |
ポジションはクォーターバック。
ニックネームはトム・トリフィック、TB12。
2000年代から現在にかけてのNFLを代表する選手の一人である。
2000年のNFLドラフトにて、6巡全体199位でペイトリオッツから指名を受けプロ入りを果たすと、2年目から先発QBに定着し、同年にチームを球団史上初のスーパーボウル制覇に導いた。
以降2018年シーズンまで負け越したシーズンは一度もなく、いずれもQBとしてリーグ史上最多となる16度の地区優勝、13度のカンファレンスチャンピオンシップ進出と11度のカンファレンス制覇、さらには同ポジションでそれぞれ歴代最多となる6度のスーパーボウル制覇と4度のスーパーボウルMVP獲得を達成している。
このほか14度のプロボウル、3度のNFL MVPと2度のリーグ最優秀攻撃選手に選出された。
リーグMVPとスーパーボウルMVP双方の複数回受賞は、ブレイディと彼の幼少期のアイドルであったジョー・モンタナの二人しか達成していない快挙である。
彼のプロ入りと同年にペイトリオッツのヘッドコーチ(HC)に就任したビル・ベリチックと共に、2000年代のNFL界に“Patriots Dynasty”(ペイトリオッツ王朝)と呼ばれる一時代を築き上げた。
プレーオフ並びにスーパーボウルでの勝利数やTDパス・獲得ヤード数、連勝記録など、様々なNFL記録を保持しており、ジョー・モンタナや長年のライバル関係にあったペイトン・マニングらと共に、NFL史上最高のQBの一人と評されている。
受賞歴・記録 | |
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スーパーボウル制覇(6回) | |
2001・2003・2004・2014・2016・2018 | |
スーパーボウルMVP(4回) | |
2001・2003・2014・2016 | |
シーズンMVP(3回) | |
2007・ 2010・2017 | |
プロボウル選出(14回) | |
2001・2004・2005・2007・2009・2010・2011・2012・2013・2014・2015・2016・2017・2018 | |
オールプロ選出(3回) | |
2007・ 2010・2017 | |
その他受賞・記録 | |
NFL 最優秀攻撃選手:2回(2007・2010) | |
カムバック賞(2009) | |
NFL Top 100:8回(2011 – 2018) | |
NFL 最多パスヤード:3回(2005・2007・2017) | |
NFL 最多タッチダウン:4回(2002・2007・2010・2015) | |
NFL 最優秀レイティング:2回(2007・2010) | |
バート・ベル賞:1回(2007) | |
スポーツ・イラストレイテッド スポーツパーソン・オブ・ザ・イヤー(2005) / AP通信 アスリート・オブ・ザ・イヤー(2007) | |
NFL 2000年代・2010年代 All-Decadeチーム 選出 / NFL 100周年記念チーム 選出 | |
カレッジフットボール ナショナル・チャンピオン(1997) |
NFL 通算成績 (2019年終了時点) |
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勝利記録
- スーパーボウル勝利数:6勝
- プレイオフ勝利数:30勝
- カンファレンス王者決定戦勝利数:9勝
- 地区優勝回数:14回
- QB通算勝利数(プレーオフを含む):208勝
- QB史上最速100勝達成(レギュラーシーズンのみ):131試合
- 先発QBとして最初の100試合での勝利数:76勝(ロジャー・ストーバックとタイ)
- 先発QBとして最初の200試合での勝利数:155勝(2位はペイトン・マニングの136勝)
- QBによるポストシーズン連勝記録:10試合(2001年シーズンのディビジョナル・プレーオフから2005年シーズンのワイルドカード・プレーオフまで)
- QB連勝記録(レギュラーシーズン・ポストシーズンを併せた):21試合(2003年シーズン第5週から2004年シーズン第6週まで)
- QBホーム連勝記録:31試合(2006年-2011年)
- 勝利をおさめたスタジアム数:36
パス記録
- QBレイティング145以上を記録した試合数:13試合
- 連続0インターセプト記録:パス試投358回(2010年-2011年)
ポストシーズン
- 通算パス試投数(1,589回)・パス成功数(1,005回)・パス獲得ヤード(11,179ヤード)・TDパス数(73TD):全て歴代1位
- プレーオフ通算出場試合数:40試合(2位は元チームメイトのアダム・ビナティエリの30試合)
- カンファレンス王者決定戦出場回数:11回
スーパーボウル
- 通算パス試投数(309回)・パス成功数(207回)・パス獲得ヤード(2,071ヤード)・TDパス数(15TD):全て歴代1位
- 通算出場回数:9試合(2位はジョン・エルウェイの5試合)
- 一試合最多パス試投・成功記録:62回・43回(いずれも第51回スーパーボウル)
- 一試合最多パス獲得ヤード:466ヤード(第51回スーパーボウル)
個人賞
- スーパーボールMVP受賞回数:4回
- 月間最優秀選手勝選出回数:9回(2位はペイトン・マニングの8回)
- 週間最優秀選手賞選出回数:29回
自己ベスト
シーズン記録
- QBレイティング:117.2(2007年シーズン)
- パッシングヤード:5,235(2011年シーズン)
- TDパス:50(2007年シーズン)
- 最少INT:2(2016年シーズン)※2試合以上に先発出場したシーズンで
試合
- QBレイティング:158.3、パーフェクト・パサー・レイティング(2007年シーズン-マイアミ・ドルフィンズ戦、2010年シーズン-デトロイト・ライオンズ戦)
- パッシングヤード:517ヤード(2011年シーズン-マイアミ・ドルフィンズ戦)
- TDパス:6TD(2007年シーズン-マイアミ・ドルフィンズ戦、2009年シーズン-テネシー・タイタンズ戦、2011年シーズン:プレーオフ-デンバー・ブロンコス戦)
経歴
2000-2019 | ニューイングランド・ペイトリオッツ |
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2020- | タンパベイ・バッカニアーズ |
2000年シーズン、ブレイディはドラフト指名を受け、ニューイングランド・ペイトリオッツに入団した。
ブレイディのプロ一年目はパス3回中1回成功6ヤードTDなし、4人のQBの中で最も少ない出場に終わった。
2001年シーズンはシーズンでパス2,843ヤード18TD・QBレイティング86.5を記録し、先発一年目でプロボウルに選出された。
ブレイディの活躍やHCベリチックの指揮するディフェンス陣の奮闘もあり、チームは11勝5敗で地区優勝を果たすと共に、第2シードでプレーオフに進出した。
チームはスペシャルチーム(ST)の活躍もあって試合を優位に進め、24-17でスティーラーズを破り、球団史上3度目となるスーパーボウル出場を果たした。
迎えた第36回スーパーボウルでは、1999年・2001年シーズンのリーグMVPであるQBカート・ワーナーや2000年シーズンのリーグMVPであるマーシャル・フォークなどを擁し、当時「芝の上で行われる最高のショー」(“The Greatest Show on Turf”)と称されたリーグ屈指のオフェンスを誇るセントルイス・ラムズと対戦した。
チームはコーナーバック(CB)タイ・ローのINTでこの試合はじめてのTDを奪うと、第2Q終盤にはブレイディがWRデイビッド・パッテンへTDパスを決め、圧倒的不利と言われていた前評判を覆し、一時はペイトリオッツが17-3で試合をリードした。
しかし第4Qにラムズが猛追を見せ、試合時間残り1分21秒というところでスコアは17-17の同点となった。
試合はスーパーボウル史上初のオーバータイムにもつれるかと思われたが、ブレイディはタイムアウトを使いきった自陣15ヤードからの攻撃をWRトロイ・ブラウンへのパスなどで敵陣31ヤードまで進め、最後はビナティエリの決勝FGでタイムアップとなる劇的なゲーム・ウイニング・ドライブを決めた。
スーパーボウル制覇を成し遂げたブレイディは、QBとしてNFL史上最も若い(全てのポジションを含めればマーカス・アレン、リン・スワンに次いで3番目に若い)スーパーボウルMVPに輝いた。
また24歳でのスーパーボウル制覇は当時のスーパーボウル優勝QB最年少記録であった。
NFL史上に残る番狂わせに貢献したブレイディは、以後NFLのスターダムを駆け上がっていく。
ブレッドソーが同地区のバッファロー・ビルズへと去り、名実ともにペイトリオッツのエースQBとなったブレイディだったが、チームは序盤から中盤にかけて4連敗を喫するなど、この年はレギュラーシーズンを9勝7敗で終えた。
2003年シーズン、チームは14勝2敗で2年ぶりの地区優勝を果たした。
ブレイディはMVP投票においてダブル受賞したスティーブ・マクネアとペイトン・マニングに次ぐ票を獲得し、プレーオフではその二人が所属するテネシー・タイタンズとインディアナポリス・コルツをそれぞれ破って3年間で2度目のスーパーボウル進出を決めた。
カロライナ・パンサーズとの対戦となった第38回スーパーボウルでは、29-29の同点で迎えた試合時間残り1分8秒から、最後はビナティエリの41ヤード決勝FGにつながるウイニング・ドライブを完成させ、チームを勝利に導いた。
ブレイディは当時のスーパーボウル新記録となる32回のパス成功を含む354ヤード・3TDを投じる活躍を見せ、自身2度目となるスーパーボウル制覇と同大会MVP受賞を成し遂げた。
スーパーボウルMVPの複数回受賞はジョー・モンタナ(3回)、テリー・ブラッドショー(2回)、バート・スター(2回)と並んで、NFL史上4人目の快挙となった。
翌2004年シーズンは開幕から第8週でスティーラーズに敗れるまで6連勝を果たし、NFL記録となる21連勝(プレーオフを含む)を達成した。
ブレイディはパス3,692ヤード・28TD・レイティング92.6を記録する活躍で、2001年シーズン以来2度目のプロボウルに選出された。
チームは14勝2敗で2年連続の地区優勝を果たし、第2シードでプレーオフに進出した。
順当に勝ち進みフィラデルフィア・イーグルスとの対戦となった第39回スーパーボウルでは、同大会史上初となる同点での第4Qを迎える(14-14)が、そこからペイトリオッツが10点のリードを奪うと、最後はイーグルスの反撃をしのぎきって24-21で勝利をおさめた。
MVPはスーパーボウル史上最多タイ(当時)となる11キャッチを記録したWRディオン・ブランチが受賞したが、ブレイディは236ヤード・2TDを投じ、MVPを受賞した過去2回のスーパーボウルよりも高いQBレイティングを記録した。
ブレイディはテリー・ブラッドショー、ジョー・モンタナ、トロイ・エイクマンに次いで、スーパーボウルを3度制覇したNFL史上4人目(4人中最年少)のQBとなった。
なお、キャリア最初の5年間で3度のリーグ制覇を成し遂げたQBはNFL史上ブレイディただ一人である。
スーパーボウル連覇の偉業に加え、プレーオフ無敗のまま4年で3度のスーパーボウル制覇を成し遂げたブレイディは、“Patriots Dynasty”(ペイトリオッツ王朝)の象徴としてNFLに一時代を築き上げた。
2005年シーズンはオフシーズンに3度のリーグ制覇を支えたオフェンシブ・コーディネーター(OC)チャーリー・ワイス、ディフェンシブ・コーディネーター(DC)ロネオ・クレネルの両コーチがチームを去った。
マット・ライトやロドニー・ハリソン、タイローン・プールなど主力の怪我人の続出やディフェンスの不振などに苦しんだチームの中で、ブレイディ自身もスポーツヘルニアの痛みに悩まされるなど、決して環境的に恵まれたシーズンでは無かったが、パス4,110ヤード・26TD・レイティング92.3と、これまでで自己最高クラスの成績を記録し、キャリア3度目のプロボウル選出を果たした。
加えて、AP通信によるオールプロ・チームのセカンド・チームにも選出された。
チームは10勝6敗で3年連続の地区優勝を果たし、ワイルドカード・プレーオフではジャクソンビル・ジャガーズに28-3で完勝をおさめ、NFL新記録となるポストシーズン10連勝を成し遂げた。
しかし、続くディビジョナル・プレーオフでは、敵地インベスコ・フィールド・アット・マイル・ハイでデンバー・ブロンコスに27-13で敗れ、ブレイディはプレーオフ11試合目にして初の敗北を味わった。
2006年シーズン、ブレイディはパス3,529ヤード・24TD・QBレイティング87.9の活躍でオフェンスを引っ張った。
チームは12勝4敗で地区優勝を決めプレーオフ進出を果たした。
ワイルドカード・プレーオフではニューヨーク・ジェッツに大勝し、続くディビジョナル・プレーオフでは、この年MVPを獲得したRBラダニアン・トムリンソンを擁する第1シードのサンディエゴ・チャージャーズを、24-21の逆転勝利で破った。
しかしAFCチャンピオンシップゲームでは、前半に大きくリードしながらも逆転でインディアナポリス・コルツに敗れ、スーパーボウル進出はならなかった。
翌2007年シーズン、オフにランディ・モス、ウェス・ウェルカー、ダンテ・ストールワースといった新たなWRがチームに加入した。
多彩なレシーバー陣を手に入たブレイディはOCジョシュ・マクダニエルズと共に、レシーバーをフィールド全体に大きく広げるスプレッド・オフェンスを展開した。
パサーとしての能力を最大限に発揮したブレイディは、ペイトリオッツと共にNFL史上に残る歴史的なシーズンを送った。
ブレイディはシーズン40TDパス以上を記録したNFL史上4人目のQBとなった。
ブレイディはキャリア2度目となるシーズン4,000ヤード越えを達成し、このシーズンの通算TDパスを史上歴代3位(当時)の45とした。
チームはシーズンが16試合制になってから史上初のレギュラーシーズン全勝を達成した。
プレーオフを順当に勝ち進みスーパーボウル進出が決まった。
1972年シーズンにマイアミ・ドルフィンズが達成して以来のパーフェクト・シーズンが期待される中、ブレイディは2月3日の第42回スーパーボウルを迎えた。
対するニューヨーク・ジャイアンツはシーズン最終週でペイトリオッツに敗れて以降調子をあげ、敵地でダラス・カウボーイズ、グリーンベイ・パッカーズを破り、ワイルドカードからスーパーボウル進出を果たした。
試合はペイトリオッツ優位と見られていたが、ブレイディは5つのサックを浴びるなどジャイアンツの激しいパスラッシュに苦しみ、試合は予想外のロースコアゲームとなった。
それでも第4Q残り2分45秒でモスへのTDパスを決め14-10と逆転したが、最後はイーライ・マニングがデイビッド・タイリーのスーパーキャッチを経た決勝ドライブを決め、ペイトリオッツは14-17で敗退した。
ブレイディはパス獲得ヤード、TDパス、QBレイティングでこの年リーグトップの成績をおさめた。
また、当時NFL史上5位となるパス成功398回、同3位のパス4,859ヤード、同7位のパス成功率68.9%、同2位のQBレイティング117.2、NFL新記録となる50TDパス(2013年にペイトン・マニングが更新)、更にはわずか8INTと、キャリアで自己最高の成績を記録し、プロボウルとオールプロのファーストチームに選出された。
シーズン中はFedEx Expressの選ぶNFL週間最優秀選手に4回(第6、7、11、17週)、AFC週間最優秀攻撃選手に5回(第3、6、7、14、17週)、AFC月間最優秀攻撃選手に2回(9月と10月)選出された。
これらの活躍を受け、ブレイディは50票中35.5票を獲得して最優秀攻撃選手賞を、そして50票中49票を獲得して自身初のリーグMVPを受賞した。
迎えた2010年シーズンはブレイディはパス3,900ヤード・36TD・4INT・QBレイティング111.0という成績でレギュラーシーズンを終えた。
パス36TD・QBレイティング111.0は、いずれもこの年リーグトップの成績だった。
ブレイディは異なる2つのシーズンでQBレイティング110以上を記録したNFL史上初の選手となった。
また、このシーズンのINT率0.8%(パス492回中4INT)は当時NFL史上最も低い数字となったほか(パス試投250回未満の選手を除く)、TDパスとINTの比9:1(36TD・4INT)という成績は、自身が2007年シーズンに記録した6.25:1(50TD・8INT)を大幅に塗り替えるNFL記録となった。
なお、どちらの記録も2013年シーズンにニック・フォールズが更新(0.6%と13.5:1)したが、2016年シーズンにブレイディが再度その記録を更新(0.5%と14:1)した。
これらの活躍が評価され、ブレイディは自身のキャリア2度目となるシーズンMVPに選出された。
同賞の投票では満票を獲得しており、これはNFL史上初の快挙であった。
加えて50票中21票を獲得しNFL最優秀攻撃選手に選ばれたほか、自身3度目となるオールプロにも満票で選出された。
更にはファン投票でリーグ最多の187万7089票を集め、2年連続6回目となるプロボウル選出を果たした。
なお、先発としての選出は2007年シーズン以来自身2度目のことであった。
その後もチームのエースとして活躍するブレイディ。
2014年には10年ぶり自身4度目のスーパーボウル戴冠を果たした。
この試合でブレイディは当時のスーパーボウル記録となる37回のパス成功を記録したほか、328ヤードと4つのTDを投じた。
特に10点のビハンドを追う第4Qでは、パス15回中13回成功・124ヤード・2TD・QBレイティング140.7を記録する圧巻のパフォーマンスを見せ、爆音軍団の異名で知られるリーグ屈指のシーホークス守備陣を攻略した。
この活躍が評価され、自身3度目のスーパーボウルMVPを獲得した。同大会の勝利回数・MVP受賞回数はQBジョー・モンタナに並ぶNFL史上最多タイとなった。
なお、この年MVP受賞者にはシボレーのトラックが送られることになっていたが、ブレイディはこれをバトラーに譲っている。
翌2015年シーズン、ブレイディは主力選手を欠いた後半は苦戦したものの、パス4,770ヤード・36TD(7INT)の成績をおさめてチームを牽引し、自身13度目の地区優勝を手にした。
また、7季連続11回目のプロボウルにも選出された。
プレーオフでは2014年シーズンの第4週で大敗を喫したカンザスシティ・チーフスと対戦し、盤石の試合運びで27-20の勝利をおさめた。
この結果、ブレイディは5季連続・通算10回目となるカンファレンス王座決定戦にコマを進めた。
迎えたAFCチャンピオンシップでは、ペイトン・マニング率いるデンバー・ブロンコスと対戦した。
ペイトリオッツはこのシーズンわずか9TDパスに対し17INTを喫するなど大不調だったマニングとブロンコスの攻撃陣を抑えこむが、逆にブレイディ率いるオフェンス陣もブロンコスの鉄壁パス・ディフェンス陣とLBボン・ミラーを筆頭とする激しいパスラッシュに苦しめられる。
この試合でブレイディは23度のヒットを受けたが、これは自身が受けた過去最高記録を11回も上回る回数だった。
試合は8点差を追うペイトリオッツが試合時間残り12秒でTDを決めるも、2ポイント・コンバージョンが失敗に終わり、2年連続でのスーパーボウル進出はならなかった。
2016年シーズン、ブレイディはレギュラーシーズン12試合の出場ながらパス3,554ヤードと28TDを投じ、リーグMVPを争う活躍を見せた。
プレーオフも順当に勝ち進み2季ぶり通算7回目の出場となった第51回スーパーボウルでは、この年のリーグMVPを受賞したQBマット・ライアン率いるアトランタ・ファルコンズと対戦した。
第1Qを両者無得点で終えると、第2Qにファルコンズが立て続けに2つのTDを奪い14-0とリードする。
巻き返しを図ったペイトリオッツだったが、ブレイディは前半残り2分というところで痛恨のINTリターン・タッチダウンを喫し、リードは21点に広がった。
ペイトリオッツはFGで3点を返して前半を終えるも、第3Qに入っても流れは変わらず、ライアンがこの日二つ目のTDパスを決めてスコアは28-3と一方的なものとなった。
しかしここからペイトリオッツが徐々に点差を縮めると、16点差の第4Q中盤にLBダンテ・ハイタワーがQBサックからターンオーバーを奪取する。
これで波に乗ったペイトリオッツは、守備陣の奮闘やWRジュリアン・エデルマンの奇跡的なキャッチを経ながらブレイディが2つのTDドライブを指揮し、更にTD後の2ポイント・コンバージョンを2度とも成功させ、試合時間残り57秒でついに試合を振り出しに戻した。
スーパーボウル史上初となったオーバータイムでは、コイントスに勝利して先に攻撃権を得ると、次々にパスを通して敵陣深くまで攻め込み、最後はRBジェームズ・ホワイトが2ヤードのTDランを決め、リーグ史に残る逆転劇を完結させた。
ブレイディは5つのサックと1つのINTを喫したものの、後半から驚異的な追い上げを見せ、スーパーボウル史上最大得点差(最大25点・第4Q開始時点で19点差)を乗り越える劇的な逆転勝利に貢献した(それまでの記録は10点差)。
ブレイディはいずれもスーパーボウル新記録となるパス試投62回・パス成功43回・パス獲得466ヤードの活躍をおさめ、ジョー・モンタナを抜いて歴代単独最多となる4度目の同大会MVPを獲得した。
2017年シーズン、シーズン開幕戦でカンザスシティ・チーフスに負けるなど、序盤はつまづいたものの最終的にはシーズンをAFC一位で終え、三度目のリーグMVPを獲得した。
プレーオフではAFCコンファレンス決勝前に手を縫うほどの怪我を負い、第4Qでジャクソンビル・ジャガーズを逆転して2年連続して第52回スーパーボウルに出場した。
スーパーボウルではフィラデルフィア・イーグルスに先行を許し、第4Qで一時逆転するものの、再逆転されたのちにファンブルにより攻撃権を失い、結局8点差で試合を失った。
だがこの試合でブレイディは505ヤードのパスを投げて自身のスーパーボウル記録を破り、またポストシーズンで10,000ヤードを投げた史上初のQBとなった。
チームの挙げた33点はスーパーボウルで負けたチームの得点としては最大となった。
翌2018年シーズンは3年連続通算11回目(ここ18年間で9回目)のスーパーボウル進出を果たした。
スーパーボウルではロサンゼルス・ラムズを破ってチームおよび自身6度目の優勝を達成した。
エピソード
以前から史上最高のQBの一人と称されていたが、先発QBとして前人未到であった5回目のスーパーボウル制覇を達成したこともあり、しばしばメディアや選手から“The GOAT”(Greatest of All Time:史上最高の略)と称されている。
また、NFL関係者だけでなく、レブロン・ジェームズやマジック・ジョンソンなど様々なスポーツ界あるいはその他の著名人が、ブレイディを「史上最高」と評して彼の快挙を称えている。
端正なルックスでも人気を誇り、ファッション誌などの表紙を飾ることもある。
USA TODAYからは「最も紳士的な服装が似合う男性」に選ばれており、また何度か表紙を飾ったこともあるGQ誌からは「世界で最もスタイリッシュな男性25人」や、「過去50年で最もスタイリッシュな男性50人」の一人に選ばれている。
フォーブス誌の「セレブリティ100」にも度々ランキング入りしている。
またブレイディと妻でモデルのジゼル・ブンチェンはアメリカで最もホットなカップルのうちの一組と言われている。
2011年にはフォーブス誌が、ブレイディとブンチェンはジェイ・Zとビヨンセ、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーらを抑え、世界で最も裕福なセレブリティ・カップルであると報じ、二人の収入は2010年5月から翌年の同月までで、計7600万ドルだったという。
2017年5月、ESPNは世界で最も有名なアスリート100人を発表し、21位に選出された。
アメリカンフットボール選手としては首位であった。
長らくナイキと契約していたが、2010年にアンダーアーマーと契約し、同社への投資やCM出演など、広告塔の一人として活動している。
2015年に同ブランドが立ち上げた”Rule Yourself”(自分を支配する)というキャンペーンで、ブレイディは「199」と書かれたシャツを着てCMに出演した。
このCMが大きな反響を得たため、アンダーアーマーはこのデザインのシャツを販売するが、瞬く間に売り切れた。
もちろん、199という数字はブレイディのドラフト順位を意味している。
ドラマや映画にも度々ゲストとして出演しており、2009年にはアントラージュ★オレたちのハリウッドで本人役を演じている。
『ふたりにクギづけ』ではコンピューター・オタク役で元チームメイトのロイヤー・ミロイと共にカメオ出演してスクリーン・デビューを果たすと、TVアニメ『ザ・シンプソンズ』、映画『テッド2』にも本人役でカメオ出演している。
2005年にはサタデー・ナイト・ライブで司会を務めた。
フットボールから引退後は俳優業に進みたいと考えているらしい。
ブレイディはハリウッド女優のブリジット・モイナハンと2004年から2006年までの3年間にわたって交際したが、2006年12月に破局した。
しかしモイナハンは翌年2月にブレイディの子供を妊娠したことを明かし、8月に男の子を出産した。
一方ブレイディはスーパーモデルのジゼル・ブンチェンと交際を続け、2009年2月に挙式した。
同年12月9日には男児が誕生し 、ベンジャミンと名付けられた。
2012年には女児が誕生し、ビビアンと名付けられた。
長男ジョンの実母であるモイナハンとは家族として良好な関係を保っており、ブレイディのスーパーボウル制覇の際には、ツイッターで祝福のメッセージを投稿していた。
プレースタイル
試合では天気や時間帯に関係なく必ず目の下に黒いペイントをしている。
スナップを受けてからパスを投げるまで体を上下に小刻みに動かしてリズムをとるのが特徴的で、2010年3月にはトレーニングの一環としてボクシングを取り入れ話題となった。
チャーリー・ワイスOC時代(2001年〜2004年)はRBのランとプレー・アクション・パスを多用し、2007年シーズンはジョシュ・マクダニエルズOCの下でスプレッド・オフェンスを展開した。
QBの中でも足はかなり遅い方であり、コンバインでの40ヤード走のタイムは5秒24である。
実質の1年目である2001年はサックされることも多かったが、相手ディフェンスのプレッシャーを巧みなステップで避けることができ、ブリッツへの対応も優れている。
特に外側からのプレッシャーへの対処を得意としているが、一方で中央からのプレッシャーを苦手としている。
ランディ・モス在籍時はロングパスのイメージも強かったが、基本的には素早く短いパスを繋いでいくオフェンスを得意としている。
2010年シーズンにはプレー・アクション・パスで12TDでINTなし、パス成功率70.7%、QBレイティング136.5という驚異的な数字を残した。
2011年以降は2.5秒以内にパスを投げる割合が高くなっているが(2014年シーズンはパス全体の58.3%が1〜10ヤードの範囲内に投じられており、これはこの年のQBで最も高い数字であった)、ブレイディ自身は2014年のインタビューで、機動力を高めてプレーを引き伸ばす能力の改善に力を入れている、と語り、同年以降、スナップから投じるまでに2.5秒以上かかったパスのQBレイティングが大幅に向上している。
ランディ・モスがチームを去って以降はロングパスの脅威に欠けているとの指摘があり、成績にもその傾向が顕著であったが、近年はこの傾向を跳ね返し、ロングパスでもリーグ屈指の成績を収めている。
このように、長年のキャリアを通じて彼のプレースタイルやその傾向には変化が見られる。
また所属するペイトリオッツは対戦相手によって攻め方を変更するゲームプラン・オフェンスを採用している為、ブレイディの選手としての特徴や傾向はキャリア・シーズンを通して決して一様ではない。
難しい局面や大舞台での活躍には特筆すべきものがあり、しばしばNFL史上もっとも勝負強いQB(クラッチQB)の一人として挙げられる。
またブレイディはNFL史上最もインターセプトを喫する割合が低いQBの一人である。
2016年シーズン終了時でのブレイディのINT率(全INT数を全パス試投数で割ったもの)は1.8%であり、これはアーロン・ロジャースに次いで史上2番目の低さである。