ラッセル・ウェストブルック

概略

誕生日 1988年11月12日(31歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 カリフォルニア州の旗 カリフォルニア州ロングビーチ
出身 UCLA
ドラフト 2008年 4位
背番号 0
身長 191cm (6 ft 3 in)
体重 91kg (201 lb)
ウィングスパン 203cm  (6 ft 8 in)
シューズ エア・ジョーダン

 

ポジションはポイントガード。

 

右利き。

 

愛称は「ラス (Russ)」。

 

歴代屈指のスコアラー型のポイントガード。

 

トリプル・ダブル回数は歴代でも屈指。

 

シーズン平均トリプル・ダブルを3シーズンに渡り達成した超人。

 

オクラホマシティ・サンダーやヒューストン・ロケッツなどで活躍。

 

受賞歴
  • MVP : 2017
  • 2×得点王 : 2015, 2017
  • 2×アシスト王:2018, 2019
  • オールNBAチーム
    • 2×1stチーム : 2016, 2017
    • 5×2ndチーム : 2011-2013, 2015, 2018
    • 3rdチーム : 2019
  • 9×NBAオールスターゲーム出場 2011-2013, 2015-2020
  • 2×NBAオールスターゲームMVP 2015, 2016
  • NBAオールルーキーチーム :1stチーム : 2009
獲得メダル
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
オリンピック
2012 ロンドン バスケットボール
世界選手権
2010 トルコ バスケットボール

 

記録

  • 通算トリプルダブル:138回 (歴代2位タイ、レギュラーシーズン2018-19終了時点)※オスカー・ロバートソンの181に次ぐ
  • シーズントリプルダブル:42回 (歴代1位、2016-17)※従来の記録はオスカー・ロバートソンの41
  • プレーオフ通算トリプルダブル:10回 (歴代4位タイ、2019年プレーオフ終了時点)
  • 連続試合トリプルダブル:11 (歴代1位、2019年1月22日 – 2月14日)※従来の記録はウィルト・チェンバレンの9
  • トリプルダブル年少記録:20歳110日 (当時歴代4位、2009年3月2日)
  • ダブルトリプルダブル:1回 (史上2人目、2019年4月3日、20得点20リバウンド21アシスト)
  • プレーオフにおける最多得点トリプルダブル:51得点 (歴代1位、2017年4月19日)
  • 同一試合同一球団トリプルダブル:2019年2月2日、ポール・ジョージと共に、史上9組目

 

経歴

選手経歴
2008-2019
2019-
オクラホマシティ・サンダー
ヒューストン・ロケッツ
代表歴
キャップ アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 2010-

 

2008年のNBAドラフトではスーパーソニックスから4位指名を受けた。

 

チームメイトだったケビン・ラブはメンフィス・グリズリーズから全体5位指名を受けた後、ミネソタ・ティンバーウルブズに交渉権が移り、そのままウルブズと契約している。

 

ソニックスはこのオフにオクラホマシティに移転したため、オクラホマシティ・サンダーの選手として始まった。

 

背番号の「0」はオルデン・ポリニス以来、球団で2人目だった。

 

2008-09シーズン、開幕からアール・ワトソンの控えとして出場していたが、11月末から先発に定着した。

 

2009年3月2日のダラス・マーベリックス戦、17得点・10リバウンド・10アシストで、20歳110日の若さ(当時歴代4位)でトリプルダブルを記録、サンダー(旧シアトル・スーパーソニックス)の新人としてはアート・ハリス、ゲイリー・ペイトンに続く3人目であった。

 

このシーズンは全82試合(65先発)に平均32.5分の出場で、15.3得点・4.9リバウンド・5.3アシスト・1.3スティールなどを記録した。

 

新人王の投票ではデリック・ローズ(ブルズ)、O・J・メイヨ(グリズリーズ)、ブルック・ロペス(ネッツ)に次ぐ4位で、オールルーキー1stチームに選ばれた。

 

2009-10シーズン、全82試合に平均34.3分の出場で、16.1得点・4.9リバウンド・8.0アシスト・1.3スティールなどを記録した。

 

チームは過去3シーズンで31勝、20勝、23勝と苦しんでいたが、このシーズンは50勝を記録し、プレーオフに進出した。

 

2020年にウェストブルックが移籍するまで45勝を下回ることはなかった。

 

2010-11シーズン、2010年11月26日のインディアナ・ペイサーズ戦、自身初の40得点以上となる43得点を記録した

 

このシーズンは全82試合に平均34.7分の出場で、21.9得点・4.6リバウンド・8.2アシスト・1.9スティールなどを記録し、3年目で初めて平均20得点を超えた。

 

NBAオールスターゲームに初めて選出され、オールNBA2ndチームにも選出された。

 

2011-12シーズン、2012年4月25日のデンバー・ナゲッツ戦、30得点・6リバウンド・9アシスト・3スティール・4ブロックのファイブ・ファイブズに近い成績を残した。

 

このシーズンはロックアウト明けの全66試合に平均35.3分の出場で、23.6得点(5位)・4.6リバウンド・5.5アシスト・1.7スティールなどを記録した。

 

自身初の2012年のNBAファイナルでは、5試合で27.0得点・6.4リバウンド・6.6アシストなどを記録し、エースのケビン・デュラントらと奮闘したが、レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイドなどを擁するマイアミ・ヒートに1勝4敗で敗退した。

 

ベンチ出場からシーズン平均16.8得点を記録したジェームズ・ハーデンはこのシーズン限りでヒューストン・ロケッツへ移籍した。

 

2012-13シーズン、全82試合に平均34.9分の出場で、23.2得点(6位)・5.2リバウンド・7.4アシスト・1.8スティールなどを記録した。

 

プレーオフ1回戦のヒューストン・ロケッツ戦で右膝を負傷、手術してシーズン終了した。

 

2013-14シーズン、前シーズンのプレーオフで右膝を負傷した影響で、シーズン中に2度同じ右膝を手術した。

 

このシーズンは46試合に平均30.7分の出場に留まり、21.8得点・5.7リバウンド・6.9アシスト・1.9スティールなどを記録した。

 

新人センターのスティーブン・アダムズが終盤から先発に定着し、長く一緒にプレーすることになる。

 

2014-15シーズン、10月30日の試合で右手を骨折し、手術して約1ヶ月離脱した。

 

2015年4月12日のインディアナ・ペイサーズ戦、自身初の50得点以上となる54得点を記録した。

 

このシーズンは67試合に平均34.4分の出場で、28.1得点・7.3リバウンド・8.6アシスト(4位)・2.1スティール(2位)などを記録した。

 

自身初の得点王を獲得した。

 

2015-16シーズン、このシーズンは80試合に平均34.4分の出場で、23.5得点(8位)・7.8リバウンド・10.4アシスト(2位)・2.0スティールなどを記録した。

 

オールNBA1stチームを初受賞した。

 

このシーズン限りでケビン・デュラントはゴールデンステート・ウォリアーズへ移籍した。

 

2016-17シーズン、2017年3月7日のポートランド・トレイルブレイザーズ戦、自己最多の58得点を記録した。

 

プレーオフ1回戦のヒューストン・ロケッツ戦、プレーオフで自身初の50得点以上となる51得点・10リバウンド・13アシストを記録し、プレーオフ史上初の50得点以上でのトリプルダブルを記録するなど、5試合で平均37.4得点・11.8リバウンド・10.8アシスト・2.4スティールという好成績を残したものの、敗退した。

 

このシーズンは81試合に平均34.6分の出場で、31.6得点・10.7リバウンド・10.4アシスト(3位)・1.6スティールなどを記録し、2度目の得点王、2度目のオールNBA1stチームに加え、ジェームズ・ハーデンやカワイ・レナードらを抑えて自身初のMVPを受賞した。

 

オスカー・ロバートソン以来55年ぶり史上2人目となるシーズン平均トリプルダブルと歴代最多となるシーズン42回のトリプルダブルを達成した(従来の最多はロバートソンの41回)。

 

2017-18シーズン開幕前の2017年9月29日にサンダーと2022-23シーズンまでの5年2億500万ドルの契約延長を結び、残っていた契約と合わせて総額はNBA史上最高額の6年2億3300万ドルとなった(従来の最高はジェームズ・ハーデンの2億2800万ドル)。

 

また、ポール・ジョージがサンダーに加入した。

 

2018年3月13日のアトランタ・ホークス戦で32得点、12リバウンド、12アシストを記録、NBA史上4人目となる通算100度目のトリプルダブルを記録した。

 

4月11日のメンフィス・グリズリーズとのシーズン最終戦、16リバウンド以上ならばシーズン平均トリプルダブルに届くところ、自身初の20リバウンドで同記録を達成した。

 

このシーズンは80試合に平均36.4分の出場で、25.4得点(7位)・10.1リバウンド・10.3アシスト・1.8スティールなどを記録した。

 

自身初のアシスト王を獲得した。

 

フリースローの試投間にスリーポイントラインを出てはならないという新しいルールが始まり、自身のルーティンが禁止になったことが一因で成功率が前シーズンより10%以上低下してしまった。

 

2018-19シーズン、開幕前の9月に右膝を手術したため、開幕に間に合わなかった。

 

11月5日の試合で左足首を捻挫して、6試合に欠場した。

 

2019年1月10日のサンアントニオ・スパーズ戦で1試合24アシストを記録した。

 

2019年4月2日のロサンゼルス・レイカーズ戦、20得点・20リバウンド・21アシストを記録、ウィルト・チェンバレン以来51年ぶり史上2人目のダブルトリプルダブルを達成した。

 

このシーズンは73試合に平均36.0分の出場で、22.9得点(17位)・11.1リバウンド・10.7アシスト・1.9スティールなどを記録した。

 

2年連続でアシスト王を獲得した。

 

トリプルダブルは5年連続1位となる34回記録した。

 

2019-20シーズン開幕前の2019年7月11日、ポール・ジョージをロサンゼルス・クリッパーズに放出したことでチームが再建状態に入ったためクリス・ポールなどとのトレードでヒューストン・ロケッツへ移籍した。

 

8シーズンぶりにジェームズ・ハーデンとタッグを組むことになった。

 

背番号は引き続き「0」となったが、ロケッツではアーロン・ブルックスの他に複数シーズンでこの番号を着用した選手はいなかった。

 

2020年2月6日のロサンゼルス・レイカーズ戦で史上46人目となる通算2万得点を達成、6000リバウンド・7000アシストも記録している選手としては史上3人目となった。

 

エピソード

2015年8月29日、ウェストブルックは大学時代からの恋人ニーナ・アールと結婚した。

 

座右の銘は「Why not?(なぜやらない?)」、これは彼のソーシャルメディアなどでもたびたび使用されている。

 

ウェストブルックが試合中に付けているラバーブレスレットには、それぞれ「Why not?」、そして「KB3(亡くなった親友のイニシャル)」が刻まれている。

 

ラスは練習が始まる前には必ず姿を見せる。

 

2~3時間早く到着することも。

 

サンダーサム・プレスティGMによれば、ドラフト前のワークアウトに参加するはずだったウェストブルックの姿がなく、本人に電話をかけると、プレスティが到着する前に車で会場に到着し、駐車場に停めた車中で待っていた、というエピソードがあるほど。

 

シカゴ・ブルズ最後の優勝を追った話題のドキュメンタリー番組『ザ・ラストダンス』が配信開始されたことを踏まえ、ジョーダンについて訊かれたウェストブルック。

 

「おそらく10歳か11歳のとき、初めてマイケル・ジョーダンに会う機会があった」と幼少時の思い出を振り返った。

 

「両親が、彼の主催するバスケットボールキャンプに参加させてくれたんだ。キャンプの最後、参加したすべての子供たちはジョーダンにサインをしてもらえるんだけど、それには列に並ぶ必要があった。僕のチームではボールにサインをしてもらうことになり、そのためのボールも両親にもらっていた。ただ、自分たちの番になったとき、自分でもなぜだか分からないけど、僕はピックアップゲームをプレイしていたんだ」 「コーチからは、『こっちに来なさい。マイケル・ジョーダンと一緒に写真を撮ってサインをしてもらえる機会を逃すのか』と言われたけど、僕は『心配しないで、僕はOKだ。今は必要ない』と答えたんだ」 少年時代、ジョーダンのサインに見向きもしなかったウェストブルックだが、2013年からジョーダン・ブランドと契約を結ぶなど、現在は“神様”と深い関係を築いている。

 

几帳面で妥協を許さない性格のウェストブルック。

 

ウェストブルックのロッカーは、きっちり整理整頓されている。

 

昨年12月のあるオフのこと。

 

ウェストブルックはサンダーのチームメートとともに、オクラホマシティの小学生を対象としたイベントに参加した。

 

そのイベントには、スクールバスを改造し、本がたくさん積み込まれた移動式の図書館もあり、ウェストブルックは参加した小学3年生との交流を楽しんだ。

 

そんな時、靴紐が緩んでいた男子児童を見つけたウェストブルックは、「おい、ちゃんと靴紐を結べよ」と声をかけた。

 

その男子は自分の足元を確認しただけでそのままバスに乗り込み、本を取って立ち去ろうとした。

 

その姿を見たウェストブルックは、「靴紐を結ぶのを忘れるなよ」と、再び声をかけた。

 

それからというもの、ウェストブルックはバスに乗り込んだ児童たちの足元が気になってしまいチェックを開始。

 

もちろん終始柔和な表情だったものの、靴紐が乱れている児童を見つけると、「ちゃんと結びなさい」と声をかけ続けた。

 

この瞬間からバスに入るにはウェストブルックの検査を通らなければならなくなり、些細な乱れも許されなかったという。

 

そんな時、両足とも靴紐が特に乱れていた男子児童を発見したウェストブルックは、「君はそういう履き方するのか? 俺も昔はそうだったから分かるよ。でもね、きちんと結ばないとダメだ」と話しかけた。

 

すると、その児童がバスの本を取りに行く前、ついにはウェストブルック本人が車内でヒザをつき、その生徒の靴紐を結んであげたという。

 

イベントの最後に記念撮影をした際には、児童全員の靴紐が綺麗に結ばれた状態に。

 

これに気分を良くしたウェストブルックは、セダン型の白のキャデラックを颯爽と運転して帰って行った、というのだ。

 

一般人とは次元が違う集中力とこだわりを紹介するエピソードは他にもある。

 

サンダーの用具係の話では、ウェストブルックは試合で着用するシューズも練習用、ホームゲーム用、アウェーゲーム用ときっちり分けてあるという。

 

また、シューズ契約を結ぶNikeに対しても、求めるクオリティは他の選手と比べて段違いに高い。

 

先日、最新モデルの『Jordan31』が届き、履き心地を確認したウェストブルックは、ソール部分の柔軟性が足りないと注文をつけ、ソール部分だけ前モデルのものに変更するよう要求。

 

自分用にカスタムされたシューズであっても、インソールの堅さが十分でないとなれば、チームの用具係が一足ずつ手作業で交換するそうだ。

 

コート上では時に狂気すら漂わせるウェストブルックだが、試合映像の分析にも妥協を許さない。

 

チーム内の全ポジションの選手の特性を把握しているというウェストブルックは、遠征の移動中は必ず映像をチェックしており、それは真夜中の移動であっても変わらないとチームメートのスティーブン・アダムズが証言している。

 

アダムズによれば、機内で寝ている時に起こされ、映像について意見を求められることもあるという。

 

どの競技であっても、トップ中のトップアスリートはこだわりが強いものだが、ウェストブルックはその中でも群を抜いている。

 

稀に見る集中力の高さも、きっと『平均トリプル・ダブル』を可能にしている要因の一つなのだろう。

 

オフの日にはボウリングをしたり、ビデオゲームをして家でゆっくりするのが好きだというウェストブルックが、唯一オクラホマシティに足りないものとして挙げたのは、ショッピングモールだった。

 

「買い物をするのが好きなんだけれど、モールはLAのほうがいいね。ここ(オクラホマシティ)だとあまり選択肢がないんだ」とウェストブルックは語った。

 

当時ウェストブルックは22歳だった。

 

若者らしい答えだと思っただけで、軽く流していたのだが、その後、アリーナに現れるときのウェストブルックのファッションがどんどん独創的になっていくのを見て、「たしかにこういう服はオクラホマシティで見つけるのは大変だろうな」と思ったものだ。

 

最近、ウェストブルックは高級百貨店チェーン『バーニーズ・ニューヨーク』と契約し、自分のブランドの服を販売し始めた。

 

つまり今では、自分好みの服はモールに買いに行かなくても、デザインして作らせればよくなったわけだ。

 

実は、ウェストブルックの一見奇抜なファッション感覚は、子どものころから培(つちか)ってきたものだったという。

 

といっても、子どものころは洋服にお金をかけられるような家庭環境ではなかったから、工夫が必要だった。

 

たとえば、今でもウェストブルックがよくかけるレンズなしの眼鏡フレームは、中学生のころに中古品販売店で2ドルのフレームを買ったのが始まりだったという。

 

突拍子もなく見えるウェストブルックのファッションだが、彼なりのポリシーがいくつかある。

 

特に重要なのは、人と違う格好をすること。

 

人と同じ無難で没個性な格好よりも、たとえ笑われても自分のセンスを表現できることのほうが大事だった。

 

もうひとつ、ウェストブルックのポリシーに、値段の高いものだけでなく、手ごろな値段のものも混ぜることがあった。

 

高級な服だけだと、かつての自分のように、ファッションに興味がある貧しい子どもたちには無縁なファッションになってしまう。

 

昨年秋、アメリカメディア『ブルームバーグ』の取材を受けたウェストブルックは、こう語っている。

 

「僕にとって、自分のルーツを忘れないのは大事なことだ。昔から2000ドルもするようなシャツが買えたわけではない。自分が育ったころに周りにいたような人たち、(低所得者が多い)都市部の子どもたちや、オシャレをしたいけれどお金がないような人たちともつながっていたい。高いものと値段を抑えたものを混ぜることで、高いお金を払わずにどうオシャレすればいいかの感覚を伝えられる」

コート上でのウェストブルックも、自分のやり方を貫いているという点ではファッションと同じだ。

 

「ポイントガードなのにシュートを打ちすぎる」「判断力が悪い」「無謀なプレーが多すぎる」などと批判されることも多かったが、そういった声をバネにしてきた。

 

その根底には、子ども時代に父からの厳しい練習で鍛えられた日々があった。

 

父からは、うまくいかなかったときの悔しさやフラストレーションが嫌なら、その感情を感じなくてもいいように努力するように言われたという。

 

熱く、それでいて図太い人間になったのは、そんな父の教えのおかげだった。

 

もっとも、父にスパルタで教えられていたころは、自分がNBA選手になるとは思ってもいなかったという。

 

「多くのNBA選手たちは、8歳ぐらいのころからバスケが得意だったようだけれど、僕は自分がNBAでプレーすることになるなんて思ってもいなかった。17歳ぐらいまでは、うまいほうでもなかったんだ」

 

17歳でUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に入ったときも、決してエリート選手ではなかった。

 

スピードはあるけれど、粗削りな選手。

 

もっともそのころ、夏のピックアップゲームでウェストブルックを見たコービー・ブライアントト(ロサンゼルス・レイカーズ)は、負けず嫌いな少年のエネルギッシュなプレーに、「いったい、あいつは誰だ?」と目を見張ったという。

 

「コート中、どこにでも彼がいた。決して手を抜くことなく、競争心もすごかった。名前すら聞いたことがなかったが、とても印象的だったから、スカウトはいったい何を見ていたのかと思ったほどだ」と、当時のウェストブルックについてコービーは語る。

 

あれから10年が経ち、今季、現役最後のシーズンを戦っているコービーがサンダーと対戦したとき、勝負を挑んだのは、その時の少年――ウェストブルックだった。

 

27歳になったウェストブルックは相変わらず手を抜くことなく、無謀なほどのスピードでコービーを抜き去り、そして10年間の間に磨いたスキルも披露して試合を支配した。

 

「彼がここまでうまくなったのは、不思議でも何でもない」とコービーは言う。

 

「あれだけ競い、勝負を大事にする選手が成長していかないわけがない」

 

人の評価は気にならないというウェストブルックでも、コービーからのこの言葉は嬉しかったに違いない。

プレースタイル

ウェストブルックは得点、アシスト、リバウンドなど、全てを万能にこなすプレイヤーです。

 

とくに得点能力が高いので、個人的にはシューティングガードのほうが向いていると思っています。

 

身体能力を活かしたレイアップやダンク、そしてミドルレンジジャンパーで得点を重ねていきます。

 

とくにミドルのプルアップジャンパーは得意技です。

 

ディフェンスはウェストブルックのドライブインを警戒するので、逆手にとったプルアップジャンパーはより効果的になります。

 

スリーポイントは得意とはいえず、確率も30%前後と高くありません。

 

ですが重要な時に決めることができるので、ディフェンスは油断できないでしょう。

 

NBAの中では、小柄なウエスブルックですが、身体能力は、歴史を見ても群を抜いています。

 

彼のプレーは、非常にパワフルでエネルギッシュです。

 

コートを縦横無尽に走り回り、彼よりもサイズがある選手たちの上からダンクします。

 

得点王にも2度輝いたことがあり、非常に攻撃的な選手ですが、彼のストロングは得点だけではありません。

 

バスケには、トリプルダブルという概念があります。

 

得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックのうち、3つ(トリプル)のスタッツを2桁(ダブル)以上記録することで、達成となります。

 

トリプルダブルは達成したら、すごいことです。

 

彼は、シーズンの平均スタッツでトリプルダブルを記録したことのある選手2人のうちの1人です。

 

また、ウエストブルックは、3回もシーズン平均トリプルダブルを達成してしちゃっています。

 

また、ウェストブルックといえばハードにプレーする印象があります。

 

それには学生時代のチームメイトが亡くなったことも関係しており、「Why Not」=「なぜやらないんだ」の精神で自分自身をプッシュしているみたいです。

 

親友の分まで生きることを誓ったウエストブルックは、自分にできる全てのことに、全てのエネルギーを投入して、全身全霊で戦うようになりました。

 

得点もリバウンドもアシストも、全てが彼の戦う土俵です。

 

しかし、悪く言えば、何もかもを自分でやろうとしてしまう選手でもあります。

 

そんな彼を「自分勝手なやつだ」、「スタッツにしか興味がないやつだ」と評価する人も少なくありません。

 

しかし、彼はそんな人たちの言葉には耳を傾けません。

 

ひたすらに努力して、自分のできることを増やし、挑戦していきます。

 

その結果が、得点王であり、シーズン平均トリプルダブルなのです。

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