ピエール=エメリク・オーバメヤン

概略

国籍 ガボンの旗 ガボン
フランスの旗 フランス
生年月日 1989年6月18日(31歳)
出身地 フランスの旗 フランス・ラヴァル
身長 188cm
体重 82kg

 

Pierre-Emerick Aubameyang

 

ポジションはフォワード(センターフォワード、左ウイング)。

 

利き足は右。

 

ガボン史上最高の選手。

 

ガボン歴代得点ランキング1位を記録するストライカー。

 

ドルトムントやアーセナルでエースストライカーとして活躍したスピードスターだ。

 

 

獲得タイトル

クラブ

ASサンテティエンヌ
  • クープ・ドゥ・ラ・リーグ:1回 (2012-13)
ボルシア・ドルトムント
  • DFLスーパーカップ:2回 (2013, 2014)
  • DFBポカール:1回 (2016-17)
アーセナルFC
  • FAカップ:1回(2019-20)
  • FAコミュニティ・シールド:1回(2020)
  • EFLカップ準優勝:2017–18
  • UEFAヨーロッパリーグ準優勝:2018–19

代表

ガボン

  • キングスカップ3位:2018

個人

  • アフリカ年間最優秀選手賞:1回 (2015)
  • ブンデスリーガ得点王:1回(2016-17)
  • プレミアリーグ得点王:1回(2018-19)
  • UEFAヨーロッパリーグ優秀選手賞 2018-19
  • プレミアリーグ月間最優秀選手:2回(2018年10月、2019年9月)
  • PFA年間ベストイレブン:1回(2019-20)
  • CAFチーム・オブ・ザ・イヤー:5回(2013年、2014年、2015年、2016年、2018年)
  • リーグ・アン チーム・オブ・ザ・イヤー:1回(2012-13)
  • ブンデスリーガ チーム・オブ・ザ・シーズン:1回(2016-17)
  • UEFAヨーロッパリーグ スカッド・オブ・ザ・シーズン:2回(2015-16、2018-19)
  • リーグ・アン 年間最優秀アフリカ人選手:1回(2012-13)
  • ブンデスリーガ 年間最優秀選手:1回(2015-16)
  • ボルシア・ドルトムント年間最優秀選手:1回(2014-15)
  • アーセナルFC年間最優秀選手:1回(2019-20)
  • Facebookブンデスリーガ年間最優秀選手:1回(2016年)
  • マルク=ヴィヴィアン・フォエ賞 : 2013年

 

経歴

クラブ
クラブ 出場 (得点)
2008-2011 イタリアの旗 ミラン 0 (0)
2008-2009 フランスの旗 ディジョン (loan) 34 (8)
2009-2010 フランスの旗 リール (loan) 14 (2)
2010-2011 モナコの旗 モナコ (loan) 19 (2)
2011 フランスの旗 サンテティエンヌ (loan) 33 (8)
2011-2013 フランスの旗 サンテティエンヌ 54 (29)
2013-2018 ドイツの旗 ボルシア・ドルトムント 144 (98)
2018- イングランドの旗 アーセナルFC 85 (54)
代表歴
2009  フランス U-21 1 (0)
2012  ガボン オリンピック 3 (1)
2009- ガボンの旗 ガボン 63 (25)

 

クラブ

 

2007年1月、ACミランのユースチームに参加、同年8月にマレーシアで開催されたユースの大会では6試合に出場して7ゴールを挙げ、得点王となった。

 

2008-09シーズンは経験を積むためリーグ・ドゥのディジョンFCOでプレー。

 

さらに2009-10シーズンはLOSCリール・メトロポール、2010-11シーズンはASモナコにそれぞれローン移籍している。

 

2012年1月にリーグ・アンのASサンテティエンヌへ完全移籍し、2012-13シーズンではリーグ・アン37試合に出場し19ゴールを記録した。

 

2013年7月、ボルシア・ドルトムントへ移籍。

 

2013年8月10日、ブンデスリーガ開幕戦のFCアウクスブルク戦でブンデスリーガ史上6人目のデビュー戦ハットトリックを達成するなど存在感を発揮した。

 

2014-15シーズンは33試合に出場し、16得点6アシストを記録。

 

右ウイングが主戦場ながらCF起用に見事に応えた。

 

2015年7月31日、ボルシア・ドルトムントとの契約を2020年6月30日まで延長したことを発表した。

 

2017年3月8日、欧州CL決勝T・2ndレグのSLベンフィカ戦ではハットトリックをあげて準々決勝進出に貢献した。

 

2016-17シーズン最終節を前に得点王争いで2位であったが、最終節ヴェルダー・ブレーメン戦で2ゴールを決め、シーズン通算31ゴール、逆転で得点王のタイトルを獲得した。

 

2018年1月31日、アーセナルFCと長期契約を締結し、移籍金はアーセナルFCのクラブ史上最高額と発表された。

 

背番号はセオ・ウォルコットが着用していた14番。

 

アーセナルFCのレジェンドでもあるティエリ・アンリが着用していた番号でもある。

 

2月4日エヴァートンFCとの試合でデビュー、すぐにゴールを決めた。

 

4月1日ストーク・シティFCとの試合では2ゴールの活躍、さらにPKを獲得したことでハットトリックのチャンスが有ったが、そのPKをアレクサンドル・ラカゼットに譲った。

 

2018年10月23日、第10節のレスター・シティ戦では逆転ゴールを決めて公式戦10連勝に貢献した。

 

同年10月、1ヶ月で5ゴールを決めて自身初となるプレミアリーグ月間最優秀選手を獲得した。

 

2019年5月10日、UEFAヨーロッパリーグ・準決勝2ndレグのバレンシアCF戦ではアーセナル移籍後初めてとなるハットトリックをきめて決勝進出に貢献した。

 

リーグ最終節では2ゴールを決め、22ゴールとし、ノーゴールに終わったリヴァプールのサラーに追いつき、そのモハメド・サラー、サディオ・マネと共に得点王に輝いた。

 

2019-20シーズン、9月1日、第3節のトッテナムとのノースロンドンダービーでは2-1とリードされたが、同点ゴールを決め引き分けに持ち込んだ。

 

続くワトフォード戦では2ゴール、アストン・ヴィラ戦とマンチェスター・ユナイテッド戦でも1ゴールずつを挙げる活躍を披露し、9月のプレミアリーグ月間最優秀選手に選出された。

 

11月5日、サポーターとの衝突から問題行動を起こしたジャカの代わりにキャプテンに就任した。

 

2020年7月1日、プレミアリーグのノリッジ・シティ戦でプレミアリーグでの50得点目を決めた。

 

プレミアリーグ79試合での50得点到達は、クラブのレジェンドであるアンリやイアン・ライトを抜いてアーセナル史上最速の記録である。

 

また、全チームを通じてもプレミアリーグ史上6番目の早さでの50得点到達である。

 

リーグ戦では昨シーズンと同じ22ゴールを決めたが、僅か1点差で2期連続のゴールデンシューズ賞のタイトル獲得を逃した。

 

FAカップでは準決勝のマンチェスター・シティ戦で2ゴール、決勝のチェルシー戦でも1PKを含む2ゴールを決め、優勝に大きく寄与した。

 

同年8月8日、チーム内トップの公式戦29ゴールやFAカップにおいて準決勝、決勝と得点を決めてチームを優勝に導いたことなどからサポーターの投票よって決定する2019-20シーズンのアーセナル年間最優秀選手に74%という圧倒的得票数で選ばれた。

 

同年9月15日、アーセナルと3年の契約延長したことを発表した。

 

2021年2月15日、プレミアリーグのリーズ戦でプレミアリーグでは自身初となるハットトリックを決め勝利に貢献した。

 

同年4月15日、自身のSNSにおいて3月の代表戦招集時にマラリアに感染し、入院していたことを公表。

 

幸いにも早期発見であったことから数日間の入院治療で快方に向かっていると明かした。

 

代表

 

オーバメヤンはディジョンで好成績を収めた後、イタリアU19の選手として招待されたが、2009年2月にチュニジアとの親善試合で21歳以下のフランス代表としてデビューした。

 

オーバメヤンは、スペインの国籍を持っているため、スペインでプレーする資格もあった。

 

しかし、父親がガボンでキャプテンを務めていたこともあり、ガボン代表としてプレーすることを決めた。

 

ガボン代表監督のアラン・ジレスから2010 FIFAワールドカップ予選のモロッコ代表戦のメンバーとして招集される。

 

2009年3月25日、オーバメヤンはガボン代表に選出され、代表デビューを果たした。

 

2-1で勝利したモロッコ戦で初ゴールを決め、その後、ベナン、トーゴ、アルジェリア、セネガルとの親善試合でそれぞれ1ゴールを決めた。

 

オーバメヤンは、2012年自国開催のアフリカネイションズカップで準々決勝に進出したガボン代表の主要メンバーとして活躍した。

 

初戦のニジェール戦、グループリーグ第2戦のモロッコ戦、第3戦のチュニジア戦と3試合連続で先制点を挙げ、ガボンの全勝でのグループリーグ突破に貢献。

 

オーバメヤンは、2012年アフリカネイションズカップで準々決勝に進出したガボン代表のエースであり、合計3ゴールを挙げ、得点王の一人として大会を終えた。

 

2012年2月5日に行われたマリとの準々決勝では、チームのオープニングゴールを決め、ポストを叩きました。

 

しかしPK戦で第4キッカーとしてPKを外してしまい、ガボンも敗退した。

 

2012年7月、オーバメヤンはガボン代表として2012年夏季オリンピック・ロンドン大会に出場した。

 

オーバメヤンは、チームの開幕戦であるスイス戦でゴールを決め、これがガボンにとってオリンピックでの初ゴールとなり、また、この大会でのガボンの唯一のゴールとなった。

 

グループステージで敗退しました。

 

2013年6月15日、ガボンがニジェールに4-1で勝った2014FIFAワールドカップ予選で、オーバメヤンはPKでハットトリックを達成した。

 

その後、2015年アフリカネイションズカップ予選のブルキナファソ戦でもブレースを決めた。

 

オーバメヤンは2015年アフリカネイションズカップでガボンのキャプテンを務め、2015年1月17日のブルキナファソ戦で2-0の勝利を収め、チームの大会開幕ゴールを決めました。

 

また、2015年3月25日のマリ戦でもブレースを決めました。

 

彼はガボンの最高得点者である。

 

2度目の自国開催となったアフリカネイションズカップ2017ではグループリーグで2得点を記録したが、ガボンはグループリーグで敗退した。

 

ワールドカップ予選の重要な試合であるコートジボワール戦(ホーム)では招集を拒否し、3-0で敗れた。

 

2021年3月25日、オーバメヤンはガボンのキャプテンとして、ホームでDRコンゴに3-0で勝利し、カメルーンで開催されるアフリカネイションズカップへの出場権を確保するための3点目を決めた。

 

エピソード

ピエールは元サッカー選手で、ガボン代表としても80試合以上に出場した経歴を持つ。

 

兄のカティリナとウィリーもガボン代表経験がある。

 

母親はスペイン人。

 

ゴールを決めた後に前方宙返りをするゴールパフォーマンスでおなじみである。

 

しかし、2016年1月にはガボンサッカー連盟から怪我をする事を懸念されて、前方宙返りをやめるように言われてしまった。

 

本人は「ゴールを決めると感情を抑えることができない。怪我をするなんて全然思わないし、何も考えずに跳んでいるだけ。でも気を付けないと」と語っている。

 

オーバメヤンは快速FWとして知られており、2013年7月にトレーニング中の30m走で3.7秒を記録したと報道された。

 

これは2009年にウサイン・ボルトが100m走の世界新記録9.58秒を記録した時の30m通過タイム3.78秒を上回る記録である。

 

12月にドイツのスポーツ番組に出演したオーバメヤンは改めて30mを3.7秒で走ると語った。

 

この発言を聞いたドイツの陸上選手ユリアン・ロイスが「陸上界のプライドを取り戻す」とオーバメヤンとの30m走勝負を熱望。

 

オーバメヤンもtwitter上でこの挑戦を受ける姿勢を見せていたが、所属していたドルトムントが認めなかったため、結局勝負は実現しなかった。

 

なお、100mの自己最高記録は10.3秒との事。

 

2015年2月28日、ブンデスリーガ第23節シャルケ04戦にて先制点を決めた際に、ゴールの脇に用意していたバットマンとロビンのマスクをチームメイトのマルコ・ロイスと共に被り、『バットマン&ロビン』のゴールパフォーマンスを見せた。

 

しかし、このパフォーマンスでイエローカードを受けたため、ユルゲン・クロップ監督からは「あれはカードを出されても仕方ないし、もちろんその点については快く思っていない。『ああいうことをするな』とは言いたくないけれど、無駄にカードをもらってはならない」と苦言を呈された。

 

2017年3月4日のブンデスリーガ第23節バイエル・レバークーゼン戦では、ドルトムントの公式スポンサーであるプーマのライバルで、オーバメヤンが個人契約しているスポンサーのロゴの形に刈り込んだ髪型でプレー。

 

さらに第26節のシャルケ04とのルール・ダービーにおいて先制点を決めた後、個人契約スポンサーがプロモーションで製作したマスクをかぶる等チームに対する背信行為を相次いで行ない、罰金の処分を受けた。

 

2019-20シーズン第37節アストン・ヴィラ戦にて、相手CKの際にT.ミングスをマークしていたオーバメヤンが突如視線を外して笑い出すような仕草を見せ、その隙に走り出したミングスを慌てて追いかけるシーンがリプレイに映し出され話題になった。

 

なお、ミングスがヘディングで逸らしたボールをトレゼゲが蹴り込み、これが決勝点となってアーセナルは敗れた。

 

このガボン代表ストライカーは、常にメディアに「悪童」として扱われてきた。

 

ドルトムントに所属した5年間で、報道された問題行動は主に3つ。

 

2016年11月に、クラブの許可を得ることなくミラノへ旅行し、CLメンバーから除外されたこと。

 

12カ月後には、練習への遅刻を問題視された。

 

アーセナル移籍が報道されていたタイミングでも、当時の指揮官ペーター・シュテーガーが「移籍を望んでおり、練習での短距離走を拒否した」と語り、物議を醸した。

 

同時期にはチームミーティングへの欠席を報道されるなど、ドイツのメディアによって形成されたイメージは「悪童」だった。

 

オーバメヤン本人も、移籍前の行動を自ら「クレイジーな少年のようだった」とコメントしている。

 

しかし、彼を2年間指導したユルゲン・クロップは「オーバメヤンは、扱いづらい選手ではない。彼は賢く、とても素晴らしい青年だ。彼と一緒に仕事するのは、とても楽しかった」と絶賛している。

 

ドルトムントのハンス・ヨアヒム・バツケCEOも「オーバメヤンは、真のプロフェッショナルだ。彼を攻撃するタブロイド紙の報道は、好きではない」とコメントしており、彼の人間性を高く評価していた関係者も少なくない。

 

悪童だった少年は、年を重ねていく中で「チーム」の存在を意識するようになった。

 

アーセナル加入後はドレッシングルームでも存在感を放っており、派手なゴールパフォーマンスを披露することも少なくなった。

 

「兄弟のような存在」と語るヘンリク・ムヒタリャンとともに、新しい環境へと適応。

 

フランス語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、英語の5カ国語を使いこなす彼は、多国籍のチームでもコミュニケーションに苦慮することはない。

 

2019-20シーズンのFAカップ決勝勝利後のセレモニーにおいてキャプテンであった彼がトロフィーを掲げる役を担ったが持ち上げる前に大事な優勝トロフィーを地面に落下させてしまった。

 

これは通常時であればトロフィーをスタッフから手渡しさせる形式であったが、コロナ禍で接触をなるべく避けるために台座に置かれたトロフィーをキャプテンがチームの所に持ち運ぶ形式になっていたという特殊な事情により生じたことである。

 

本来は、土台、優勝杯本体、蓋の3つの部分で構成されているうちの土台を残して持ち運ばなければならなかったのだが台座から持ち運ぶ形式のためこれを知らなかった彼は土台ごと持ち運んでしまい不安定になってしまったのである。

 

なお、このことがあったためか数週間後にコミュニティ・シールドを獲得した際は、帰りのバス内で座席に乗せた優勝盾をシートベルトでしっかり固定し「とても大切」と笑いながら連呼する動画をSNS上にあげた。

 

プレースタイル

 

彼の特徴といえば、やはり優れたスピードが挙げられます。

 

本人も自信を持っていて、過去に「ウサインボルト氏と30mスプリントで勝負したい」と発言したことも。

 

オーバメヤンは一瞬のスピードでディフェンダーを剥がすことができますので、ディフェンスラインの背後をとるプレーが得意です。

 

マークについているディフェンダーを抜群の加速力で置き去りにし、ボールを受けて冷静にゴールへ流し込む。まさにゴールハンターと言える選手です。

 

また、ボールを受けるためのポジショニングも上手。

 

少しゴールから離れた位置から急にスピードを上げてゴール前に走り込むので、守備側もマークしきれません。

 

クロスボールに対し、ディフェンダーの背中側から前に入り込んだり。

 

駆け引きの部分にもスピードを生かした上手さがうかがえます。

 

スピードスターのオーバメヤンは、数えきれないほどゴールネットを揺らしてきました。

 

得点力にも優れていて、中でもクロスボールに足先で合わせるシュートが得意です。

 

サイドからのクロスに足先やインサイドで合わせるようなシュートは簡単そうに見えて枠を外しやすいですが、オーバはきっちり決めてきます。

 

ゴール前の冷静さも抜群。

 

また、長身と跳躍力を生かしたヘディングでもゴールを脅かすことができます。

 

身体能力に加えてサイズもあるのはかなりのアドバンテージでしょう。

 

センターフォワードとしてよくプレーしているオーバメヤンですが、前述のとおりウイングでのプレーも日常的に経験しています。

 

そういったこともあってか、中央で起用されている時もサイドに流れるプレーをよく見せます。

 

守備側からするとマークの受け渡しに多少なりとも混乱するでしょう。

 

サイドでパス交換しワンツーパスでエリアの深くに入り込むも良し、ドリブルで仕掛けるも良しです。

 

彼はウイングもできるのでプレーの幅が広いです。

 

もともとは右ウイングを主戦場としていたオーバメヤンは、ユルゲン・クロップやトーマス・トゥヘルの指導でCFにコンバート。

 

もともとはイタリア代表のチーロ・インモービレを中央に配置する案が存在し、右サイドでの起用が予想されていた。

 

しかしインモービレがチームに馴染めなかったこともあり、オーバメヤンには中央でのプレーが求められることになる。

 

特にトゥヘル指揮下で、オーバメヤンの動き出しは劇的に改善。

 

オフ・ザ・ボールのスキルが劇的に向上し、ストライカーとして「パスを引き出せる」ようになっていく。

 

もともと最大の武器とされていた爆発的なスピードは、ショートカウンター局面における火力に直結。

 

相手のハイラインを一気に攻略する快速は、相手チームに恐れられることになった。

 

ドイツのフットボールジャーナリスト、ラファエル・ ホーニシュタイン はドルトムント時代のオーバメヤンについて「DFと並んだ状態からのプレーを好み、スペースに飛び込む動きを得意とする万能ストライカー。唯一、相手を背負ってのプレーは苦手」と分析している。

 

ピッチの中でも、利他性と柔軟な吸収力は群を抜いている。

 

ウナイ・エメリが就任した今季、CFだけでなく左サイドのウイングでも起用されているが、明らかに判断の質は改善した。

 

アーセン・ベンゲル晩期も左サイドで起用されることがあったオーバメヤンだが、当時は縦へのドリブルに依存。

 

無理に仕掛ける場面が目立った。

 

それに比べて翌シーズンは、足裏でのボールコントロールで「落ち着かせる」プレーが散見される。

 

独力で仕掛けるのではなく、相手を引き付けてから周りを使う。安

 

全なSBへのバックパスも目立つが、時間を使う選択肢が生まれたことで「攻撃に厚みを加える」ことが可能になった。

 

周りにシンプルに預けてから、一気に裏へと飛び込むようなフリーランも絶品。

 

スピード自慢のストライカーは、左ウイングのポジションで「緩急」を使いこなしている。

 

ドリブルで縦に突破し、センタリングを狙うようなプレーに固執しなくなったことで、結果的にオーバメヤンは相手守備陣を苦しめるアタッカーに進化しているのだ。

 

CFとしては「屈強なCBに競り勝ち、ボールを足下にコントロールするポストプレー」を苦手としているが、ウイングのポジションであれば相手はSB。

 

十分に縦パスを受けることも可能で、内側に切り込むようなプレーにも繋げやすい。

 

もちろん最大の武器であるスピードも衰えておらず、ショートカウンターの局面では猛威を振るう。

 

スペースへのボールを追う局面になれば、相手を一瞬で置き去りにする。

 

縦にスペースがあれば、一気に仕掛ける積極性も健在だ。

 

エリア内では、ドルトムント時代から得意とする「ファー詰め」がある。

 

DFの視野に入る「ニアポスト側」に入り込むフェイクを挟み、死角となる「ファーポスト側」に抜け出しながら味方の鋭いクロスに滑り込む動きは、瞬発力を武器とするオーバメヤンの「伝家の宝刀」だ。

 

フットサルの技術としても知られる「ファー詰め」の動きから、スピードを落とさずにダイレクトシュートを流し込む。

 

エリア内での駆け引きの技術は、伝統的なストライカーの血統を感じさせる。

 

さらに、シュートを放つエリアも年々広がっている。

 

トッテナム戦のゴールは印象的だが、パスに合わせてスピードを落としながら方向転換。

 

そのままダイレクトで、名手ロリスのタイミングを外すようにゴールに突き刺した。

 

中距離からのシュートは彼にとって「新たなる得点源」となっており、特にインフロントで巻くようなシュートを好む。

 

ボールをインフロントで擦るような「フリーキック的なシュート」ではなく「比較的スピードの速いシュート」を得意とすることも特徴だ。

 

一瞬、タイミングが遅れるような独特なフォームからのシュートは、相手のGKを惑わす。

 

シュートエリアが広がったことは、チームにとっても重要な武器になっている。

 

オーバメヤンが「共にプレーすると、化学反応が起きる」と絶賛するフランス人FWアレクサンドル・ラカゼットは、利他的なアシストパスで周囲の力を引き出す。

 

ボックスストライカーとしてオーバメヤンのライバルになると思われていたラカゼットだが、中央のスペースでボールを引き出す能力に優れており、下がりながら起点になることも可能。

 

ワイドに主戦場を移したオーバメヤンはラカゼットが生み出したスペースを使いながら、彼からのアシストパスを引き出す。

 

エリア内でのシュートセンスにも優れるラカゼットへの警戒は、オーバメヤンの存在によって軽減される。

 

お互いのプレースタイルを理解することで、彼らはプレミアリーグ屈指のコンビネーションを築こうとしている。

 

ラカゼットとオーバメヤンの2人を前線に置くことで、多種多様なパターンでゴールを奪うことが可能になり、アーセナルの火力は倍増。

 

途中から2枚を前線にそろえるオプションも、効果的に機能している。

 

「悪童」と呼ばれた快速ストライカーは、晩年のサミュエル・エトーのように「チームに求められる選手」に変貌しつつある。

 

アーセナルというチームに適応し、プレーの幅を広げている快速ストライカー。

 

最高の相棒とチームを得た今、「さらなる高み」が彼を待っている。

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